相続・事業承継対策

相続・事業承継対策

改正「事業承継税制」の
しくみとその対策

(5)何株でも相続税の納税猶予の対象になる!?

相続税の納税猶予は、一定の要件の下、後継者が相続又は遺贈により取得した株式等に係る相続税の80%相当額が猶予される制度であるが、その納税猶予の対象となる株式等は、後継者が相続前から保有していた完全議決権株式等を含めてその会社の発行済完全議決権株式等の総数の3分の2が限度とされている。
相続や遺贈で取得したすべての株式が対象になるわけではないので、注意が必要である。
事例で確認してみよう。

例1. 甲社(A+B≧C×2/3)の場合

(イ)後継者が相続又は遺贈により取得した会社の完全議決権株式等の数:
30,000株(A)
(ロ)後継者が相続開始の直前において有していた会社の完全議決権株式等の数:
10,000株(B)
(ハ)相続開始の時における会社の発行済完全議決権株式等の総数:
45,000株(C)
(ニ)相続税の納税猶予の対象となる株式等
C×2/3-B=45,000株×2/3-10,000株=20,000株
∴相続したすべての株式等が納税猶予の対象にならない

例2. 乙社(A+B<C×2/3)の場合

(イ)後継者が相続又は遺贈により取得した会社の完全議決権株式等の数:
10,000株(A)
(ロ)後継者が相続開始の直前において有していた会社の完全議決権株式等の数:
0株(B)
(ハ)相続開始の時における会社の発行済完全議決権株式等の総数:
18,000株(C)
(ニ)相続税の納税猶予の対象となる株式等
A=10,000株
∴相続したすべての株式等が納税猶予の対象になる