相続・事業承継対策
改正「事業承継税制」の
しくみとその対策
(4)贈与税の納税猶予制度とは?
贈与税の納税猶予制度とは、後継者が贈与により取得した株式等に係る贈与税の100%相当額を、贈与者の死亡時まで猶予し、贈与者の死亡時において、その株式等のその贈与時の価額で相続財産に加算して相続税を計算する制度である。ただし、その相続開始の時点において、後継者がその会社を経営している場合には、その株式等の課税価格の80%相当額に対応する相続税が猶予されることとなる。
この制度を受けるには、相続税の納税猶予と同様、経済産業大臣の認定を受け、5年間は雇用確保などの事業継続要件を満たさなければならず、その後についても、基本的に後継者が対象株式等を保有し続けなければならない。
そして、猶予された税額は、後継者が死亡した場合等、一定の場合に免除されることとなる。
1. 対象となる会社
相続税の納税猶予における会社の要件と同じ
2. 後継者(受贈者)の要件
贈与を受ける時において、次の要件を満たしていること
(1)会社の代表権を有していること
(2)20歳以上であること
(3)役員等の就任から3年以上経過していること
(4)総議決権数の50%超の議決権を後継者及びその親族で有しており、かつ、これらの者の中で最も多く議決権を有することとなること
3. 先代経営者(贈与者)の要件
(1)会社の代表権を有していたこと
(2)贈与の時までに代表取締役を退任すること
(3)贈与の直前において、総議決権数の50%超の議決権を贈与者及びその親族で有しており、かつ、後継者を除いたこれらの者の中で最も多く議決権を有していたこと
4. 担保提供要件
納税猶予される贈与税額及び利子税額に見合う担保提供が必要
5. 対象となる株式等
次の区分に応じて計算したものが限度となる。
なお、(1)に該当する場合には(C×2/3-B)以上の株式等を、また(2)に該当する場合にはAの全部の株式等を、後継者(受贈者)は先代経営者(贈与者)から贈与を受けなければ、この制度の適用が受けられない。
(1) A+B≧C×2/3の場合 C×2/3-B
(2) A+B<C×2/3の場合 A
A:先代経営者(贈与者)が贈与の直前に有する会社の完全議決権株式等の数又は金額
B:後継者(受贈者)が贈与の前から有していた会社の完全議決権株式等の数又は金額
C:贈与直前の会社の発行済完全議決権株式等の総数又は総額
(注)総数又は総額の3分の2に1株未満又は1円未満の端数があるときは、端数を切り上げる。
6. 猶予税額が免除される場合
(1)先代経営者(贈与者)が死亡した場合
(2)後継者(受贈者)が死亡した場合
(3)申告期限後5年を経過した後に、この会社に破産開始の決定又は特別清算開始の命令があったことなど
7. 先代経営者(贈与者)が死亡した場合
先代経営者が死亡した場合には、贈与税の納税猶予が免除され、その対象となった株式等は、その受贈者が相続又は遺贈により取得したものとみなして、相続税を計算することになる。
この場合の相続税の対象となる株式等の価額は、贈与時の価額となる。
なお、この場合に相続税の納税猶予の要件を満たしている時は、経済産業大臣の認定を受けることによって、相続税の納税猶予が受けられることになる。ただし、この場合には、相続税の申告期限までに、相続税の納税猶予の適用を受ける旨を記載した一定の書類を添付して申告書を提出するとともに、一定額の担保を提供しなければならない。